むかしむかし、野崎村は飲み水にも不自由な村やったと。ある年、日照り続きで井戸水もかれてしもうたそうや。
そんなとき「サズベイ(堀田)」のおばばが病気になってしもうた。おじじは、頭を冷やしてやる水も無くて困ったそうや。

ある晩、おじ時の枕もとに薬師如来様が
「背戸(せど※)に横穴を掘れば、水はいくらでも湧き出すぞ。」
とお告げがあったそうな。おじじが、せっせと横を掘るときれいな水が湧き出してきたと。
おじじが、その水で、おばばの頭を冷やすと一晩のうちにケロリと熱が下がってしもうた。近所の人たちもみんな、この水をもらいに来たと。
※背戸…家の裏
あるとき、病気のおかかが薬師如来の水を飲みにサズベイの背戸までやって来たが、池の前でばったり倒れてしもうたんや。すると横穴の池から如来様が姿を現して、おかかに薬をくれたんや。
その後、病気の人が池の前でお祈りをすると、どこからともなく薬が飛んできて、病人の目の前に置かれたそうな。

村人は上野(うわの※)に薬師堂をたてて如来様をお祀りしたんやそうや。
野崎村のヤクシタン(薬師谷)は、こんなわけでつけられた地名じゃ。
※上野…村の後の高台に広がる畑地
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