佐渡のむかい岸にゃ、島がいくつか並んどるげけど、でかいがん(大きいの)からいうと「寺島」、「カラス島」、「嫁島」、「コシキ島」、「ろうそく島」の順番になるげんわ。
「寺島」にゃ、今じゃ波に侵食されて、その跡は小さなってしもたげけど、むかしゃ、寺が建っとったがやといか。

石動山に泰澄大師(たいちょうだいし)と言うて、偉いお坊さんが天平寺(てんぴょうじ)という寺を建立されたときのこっちゃ。そのお坊さんのお弟子さんでな、「空言(くうげん)」というご坊さまがおらっしゃっての。その日は、天気のいい日やったとい。石動山からずうっと眼下の七尾湾を眺めとったら、なんとも言えん神々しくてぽうっと光っとるような島があったがやとい。
「うん、こりゃ不思議なことじゃ。これはきっと仏さまのお導きに違いない。」
と思い立ち、さっそくこの島にやって来て、真言密教の「瑞禅(ずいぜん)寺」という寺を建てたがやと。

ところが、
「善男善女ちゅうのは、どんなもんやててか。」
「いかなてて、信心深い人のこっちゃ。」
とたくさんの人が有り難がって参るもんやそやさかいに、佐渡の在所の嫁さんらちゃも、寺参りするときにゃ「コシキ島」まで来て、一ぺんそこで休んで身づくろいしてから、参ったさかに、「腰き島」というがになったがやと。
そいから、参りをすまいた嫁さんらっちゃ、寄り集まって、いろいろしゃべくったり、休んだりしたから「嫁島」と言うがやと。
寺島のすぐそばにある尖ったちんちゃい島を「ろうそく島」と言うげけど、むかしはもっとろうそくに似ていたが、今はだいぶ崩れてしもた。

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